火曜日嫌い

やまもとのブログです。

清水宏の炎の演劇部!!〜夏だ!野音だ!しみんぐ スーン!〜@日比谷野外大音楽堂

生憎の雨模様だったけど、しっかりカッパを着込んだお客さんがいっぱい。
開演時間から15分ほど過ぎて場内に入った時、思ったより座席が埋まっていて驚いた。
雨だし、と一瞬日比谷へ向かうのを躊躇った自分を恥じた。


「冒険ルポ・登山編」、「名古屋版ET・いーてゃあ」、「やる気まんまん男」の3本。
公演時間2時間弱の中で「冒険ルポ」が1時間ちょっと、あと2つが20分前後の配分。


「冒険ルポ」は登山ルックな清水さんが「演劇」というものに対する業のような歪んだ愛情を吐露した流れから、
「日本で最も信用できない職業」であり「しかしやたら声が通る」「アングラ演劇の演出家」松村武、
トレーニングバカで年間400km走り、この3年間で公共の交通機関を利用したことがない、
毎日稽古場に走ってやってくる「ネイチャーボーイ」佐藤拓之、
「バカみたいに食べて飲んで寝てばかりいるくせに鋼の肉体を持つ」、
ナチュラルボーンキラーズ」今奈良孝行の3人のキ○ガイと、
登山初心者である清水宏43歳の4人で日本で二番目に高い北岳(標高3162m)登った顛末。
ドラクエのパーティで言ったら、遊び人・キチ○イ・キチガ○・大○チガイですからね」

午前3時に叩き起こされ、「三角定規の先っぽのような」傾斜をよじ登る
イメージしていた登山とは正反対、会話ゼロ、歩くペース早い
「松村、これピーク?」「これがピーク?」松村「…ピークですよ」
すぐに音を上げる清水さんを無視して、松村は「休憩10分です」
登り始めてから4時間ほど経った頃、今奈良が発した言葉は「気持ちいい〜!」
「やっと目が覚めて来ましたよ!」「今まで寝てたのかよ!」
とうとう切羽詰まった43歳が起こした行動は、「ウァアアァァッ!」と声を上げて膝を抱えて座り込む。
「…そう、仮病だ」松村「休憩12分です」


それまで清水さんの荷物をほとんど持ってくれたり、「僕の知ってる清水さんなら出来る!」と持ち上げ、
それでも駄々をこねる清水さんを抱き締めてまで励ました佐藤までもが、
「…僕じゃなきゃ駄目ですか」と言った瞬間の恐怖、
限界が訪れた佐藤にチョコレートを求められたが、「…持ってないよ」
「さっきポケットに入れてたじゃないですか…!」惜しくなって嘘をついた後に、
岩陰に隠れてチョコレートを貪っているのを佐藤に見つかった時の恐怖、
「やっぱり持ってるじゃないですか」「皆には言わないでくれ…っ!」
「…言えるわけないじゃないですか」という先輩だろうが年上だろうが関係ない醜い人間の有様が、
一人きりの野音のステージで語られる
さらに登り続け、清水さんついにキレる
「さっきピークって言っただろうが!」「あなたがそう言って欲しかったんでしょう!」


膝、足、高山病、とあらゆる「仮病」を使いきってしまい、
「もう登れない」と言う清水さんに対して松村は、「分かりました、清水さんを置いていきましょう」
それを聞いた清水さんは、松村にすがって「やれる、俺やれるよ!」
松村「信用できませんね、あなたの心情が理解できません」演劇の口調だ


突如「HERO」が流れ、それまで放置されていたスクリーンと照明がやっと動き出し、
中盤は男達の命懸けのサバイバルドキュメンタリーと化した
「松村!今からこのパーティの指揮権は俺にある!」
「松村!かっこよく死にたいか、無様に生き延びたいか、どっちだ!」


「だいぶ話を盛ってしまったんですが…」
人は現金なもので、山頂に着くと少し元気になってしまう。
「松村、登山のどこが楽しいんだ?」
「ちっとも楽しくなんてないですよ、ただ家に帰って風呂に入った時に、
『ここまで生き延びて来れた!』と思うのが良いんです」


「それって結局…演劇と一緒じゃねえか!」


そこから実際の様子を映した映像へ。
それまで清水さんの口から語られた「松村」「佐藤」「今奈良」が映像の中で実際に動いていることの興奮!


暗転後、タキシードに身を包んだ清水さん
何の変哲もない名古屋のオバサンの元にETがやってくる「名古屋版ET・いーてゃあ」
「物置に何かおるがね!きーもちわるい!」
オバサンはいーてゃあをケッタに乗せて名古屋中を駆け巡る!
「いーてゃあ!言葉を覚えるがね!『あんかけスパ』!」「あんかけスパ!」
「これが名古屋ドームだが!」「広いでかんわ!広いでかんわ!」
やがていーてゃあは政府に追われ、オバサンがケッタで逃げ切ろうとしても力が足りない、
そんな時にご近所の桜井さん、鈴木さん、田中さん、宗像さんがケッタに乗って加勢に来る!
「桜井さん…!」「あんたはひとりじゃないがね!」
名古屋港に迎えのUFOがやってきて、オバサンを旦那さんの職場、東京に出て行った娘の下へ運ぶ
最近帰りが遅く浮気をしていると思っていた旦那は、実は夫婦2人で旅行に行くために居酒屋でバイトをしていて、
下北沢で暮らしてOFF・OFF・OFF・OFF・OFF…シアターで演劇をやっている娘は彼氏も出来て夢を追い掛けていて、
もう誰にも必要とされていないと思っていたオバサンは、それが間違いであったことに気付く
「いーてゃあ!あんたには帰らなきゃいけない場所があるがね!」「いーてゃあ!」
そして2年後…「物置に何かおるがね!…いーてゃあ!それあんたの彼女かね!…きーもちわるい!」
このシリーズ大好き。熱い一人芝居。最後ほろっとする。


最後は着替えて「オラオラオラ〜!ここに来てやる気まんまんだオラ〜!」
野音の人にもう規定の時間を過ぎてるって言われたけど関係ねえ!」
でかい畳(空想上の)を客席に投げて、客と行ったり来たりして「畳をどんどんでかくするぞオラ!」
「俺のパントマイムの特徴は全部口で説明するところだ」
客全員を巻き込んで畳ウェーブ。「途中で一回なくなるんだよな」「自分を信じないと出来ないぞ!」
照明さんを使って「皆既日食だオラ!」「この間みたいなヘマするんじゃねえぞ!」
野音の向こうに見えるビルに向かって「税金ドロボー!」と全員で叫び、
「いないかなぁ、ここに来てるはずなんだよなぁ…○りP…」
ステージから降りてきて、客の間を練り歩き、「これ一回やってみたかんだ!」と
階段を転げ落ちて「銀ちゃん!」それ2年前もやってましたね
「危ないって言うなら本気で止めろ!」
水浸しになりながらステージに戻り、大きな拍手を受けながら奇妙なダンス
「俺は演劇を愛しています、俺が出ている舞台も見に来てください」と挨拶。


深々と礼をしてステージからハケてもまだ拍手がやまず、最後にもう一度出てきて
「もう帰ってください」


元気をたくさんもらった!
誰よりも元気で力いっぱいの清水さんを見て、自分も元気にならなきゃと思いました
野音いっぱいのお客さんを一人で笑わせる清水さんがめちゃくちゃかっこよかった
やってることはくだらなくてばかばかしいかもしれないけど、熱さの伝わる素敵な演劇人だ


雨宿りがてら後ろの方で見てたら、のたのたとカエルが這い出してきてて笑った。
ずっと蝉が鳴き続けてたけど、それ以上に清水さんの声がでっかかった。