火曜日嫌い

やまもとのブログです。

劇団PATHOS PACK『ユエナキ子』 〜ドウシテ、イキテイルノダロウ・・・〜@吉祥寺シアター

キャスト
宇梶剛士/金井良信/平野貴大/沢井正棋/石田恭子/中山祐一朗/石井里弥/松本キック/高木珠里(劇団宝船)/endy/大西智子(あなざーわーくす)/山本浩貴 (PU-PU-JUICE)/木雅代(あなざーわーくす)/石川伸一郎 /小出奈央/青柳尊哉/岡田優 


キックさんを見に行ってきました
松本ハウスが「JINRUI」にコンビ名を変えて活動再開するのに合わせて、
松本キック」から「シンカ」へ名前を変えられるとのことで、この公演が「松本キック」として最後のお仕事になるのかな?


そもそも論になってしまうんだけど、演劇のエンゲキエンゲキしたところが非常にこそばゆい
大人数で一定のリズムを保ってドタバタしたり、意味のないことを意味があるように大仰に話したり、
そういうのがとてもくすぐったくて、開演から終始もじもじ、そわそわしてしまいました
あと声が大きいから威圧感があって覚悟しておかないとドキドキしてしまう
慣れてきてからはまともに舞台を見られるようになった。エンゲキは慣れが必要…
でもやっぱり生身の人間が発する迫力とエネルギーはものすごかった


恋人の「健君」を交通事故で亡くしたOLの「ユエ」が自分の内面と対峙することで先に進もうとするお話
「個性」というのは他者からの認識によって初めて「個」であることを自覚するのであって、
他者の介在しない世界においては「個」は何の意味もなさない
劇中では「社員証」が象徴的に使われていたけど、属するものが何もない、自分であることを証明できるものが何もない状態で「あなたは誰?」と問われた時に果たしてどうやって「自分」というものを説明するのか?
そういうことに対しての捉え方を提示された、ような気がした
自分が自分であるために最も必要だった存在が突然なくなってしまった時の喪失感と絶望が痛々しかった
寄りかかったり、頼ったり、集団に紛れてしまったり、自分の力で立たなくても良かったりするのって楽だものね
同僚の顔がある日様々な色で塗り分けられて見えるようになってしまうという、直球な「顔色を窺う」の暗喩もあった
作ったものの食べずにそのまま三角コーナーに捨てたパスタの食材である腐りかけの野菜たちが、
会社の人間の姿を借りて毎夜現われ、そこに宇梶さん扮するゴキブリが野菜を食べに出てきて殺虫剤で退治、
臭いのする野菜にも脱臭剤をかけて片付ける…というくだりの意味が全然分からなかった。
「臭かったなぁ…まるで『まだ生きてるんだー』って言ってたみたい」というようなセリフもあったので、
「生きる」ということについて描写しているんだと思うけど前後の繋がりも全くないし…うーんうーん


とてつもなく想像力を要求されるので気付いたら前のめりになってた。
キックさんは職場では上司、ユエの内面世界ではドクターと、ツッコミ件ストーリーテラーのような良い役でした!
あまり滑舌も良くないし(すいません)時々セリフが聞き取りにくかったりするけれど(すいません)、
佇まいと立ち姿とツッコミの間合いが素敵でした。好きです。


主演の石井里弥さんは元々クレジットされていた女優さんの降板により、2週間というわずかな稽古期間で参加したらしい
見事に「ユエ」という、誰でもなくて誰でもある、とても難しい役を綺麗にこなしていたと思います
中山祐一郎はなんであんなに声ひっくり返ってるの?演技が一番素っぽくて安心して見ていられた
この人もアメーバ俳優だなぁ、印象が全く定まらないや


途中、泉が満たされる場面で舞台セットだと思っていたステージ上方の巨大な蛇口からじゃばじゃばと本当に水が溢れてきたのにはびっくりした!
ステージが一部ぱかっと開いて、そこに水が流れ落ちる。
効果音ではないリアルな水音にこちらの心も洗われるようだった。
見終わった後に清清しさを感じたのはこの水のおかげもあるのだろうな
あとユエが「健君」に膝枕してもらいながら大好きな本を読んでもらってたのに、気がついたら別の人と入れ替わっていた!というシーンの簡単なトリックに簡単に引っ掛かってしまった…


高木珠里さんがとてもパワフル!
舞台に出てきただけで場の空気を全部持っていってしまうほどの勢い
青柳尊哉さんがイケメンだった!イケメンはいいものです


声だけが聞こえる場面がいくつかあったけど、宇梶さんの声はすぐに分かる
声も体も動きも大きいけどどこかかわいい、熊っぽい。
wiki見てたら「好きなお笑い芸人は江頭2:50。宇梶の携帯の待ち受け画面も江頭である。」って書いてあった
宇梶さん大好きです


隣の席の人が30分置きで手にキンカンを塗るもんだから終始キンカン臭くて仕方なかった
あんな締め切られた空間でアンモニア臭を漂わせるとは何事か!


加賀谷君が見に来てた。私服の加賀谷君は完全にカタギではない