火曜日嫌い

やまもとのブログです。

大谷ノブ彦(ダイノジ)監督作品「Air guitar?」@神保町花月


「よしもと100本映画」企画のうちの1本。
同時上映は池乃めだか監督・主演「浪速の弁護士 桜 春彦事件簿」
クライマックスの裁判は5分で終わり、ラストは主人公が逆恨みされて道頓堀で刺されます。
めだか師匠ヒロイズムが過ぎます!
悪役の小薮の目付きが澱みすぎです。そこが見所。


主演は「オオヤ」役のハローバイバイ金成と、「ダイチ」役の蛭子能収
オープニングは蛭子さんのエアギター。
この劇中のダイノジは、黄色地のダンディセーターを着ている。
特に仕事もなく彼女と部屋で漫然と過ごしていたオオヤの元に、
相方のダイチがフィンランドで行われたエアギター世界大会で優勝した報せがもたらされる。
劇場へ行くとネタ合わせの時間を削られて取材が入るも、記者が興味を持つのはダイチばかり。
いつしか「ダイノジ=エアギター=ダイチ」として認識されていることに苛立ちを覚え始めるオオヤ。
エアギターを求められる仕事ばかりが増え、ダイチとの関係もギクシャクしていく。
エアギターは日本のお茶の間に「演芸」として受け入れられ始めた。


ある日、「エアギター エピソードゼロ」というドキュメンタリー映画の仕事をふられたオオヤ。
そういう仕事はダイチに、とこぼすオオヤに「甘えてんじゃねえ、いつまでも若手のつもりでいるなよ」とぶつけるマネージャー。
映画を通して、エアギタリストたちがそれぞれドラマを背負っていること、エアギターへかける思いを知るオオヤ。
所変わって、エアギター日本大会決勝が行われている渋谷eggman。
いつものようにダイチのみがゲストとして招かれ、エアギターを披露する予定だった。
そこにオオヤが突然現れる。
ステージに立って前説を始めるオオヤ。エアギターの楽しみ方。声を上げて腕を上げて、目一杯応援してくれと。
オオヤが「エアギターワールドチャンピオン、ダイチ!」と呼び込む。
ステージに上がったダイチは真っ先にオオヤに飛びつき、目一杯抱き締めた。
(ダイチがエアギターを弾き始める瞬間、ステージにいたのは大地洋輔だった)


出番を追え、ダイチが外に出るとオオヤが佇んでいた。
「上手いじゃん、前説」「…そっちこそ、上手いじゃん、エアギター」


大地くんがエアギター世界チャンピオンになったことで一変した日本のエアギターシーンと、
ダイノジそのものについてセミドキュメンタリーで追った作品
エアギタージャパン会長のかながわIQ、お茶の間にエアギターをもたらした草分け的存在の金剛地剛史、
日本エアギター選手権優勝経験を持つ市川theROCK、エアギタリストの宮城マリオ、
コラムで大地くん優勝の際にエアギターについて言及した作家の高橋源一郎へのインタビュー、
そして大地くんへのインタビューを大谷自身が行っている。
ドラマ部分を補足するようにインタビューパートが挟み込まれ、
一夜にして取り巻く環境の変わってしまったダイノジ二人の戸惑い、
自分がこれまで築き上げてきたエアギターという文化が演芸として認識されることへのかながわIQの思いが丁寧に描かれている。
劇中かながわIQに扮するのは坂田聡
人生を賭けたエアギターが、芸人が世界一になったことで軽く見られてしまうことへの恐怖や違和感を、短いシーンで見事に表現していた。


「ダイチ」と「オオヤ」の会話は、ほぼノンフィクションだろう。
これまでネタにおいての主導権を握ってきたオオヤが蔑ろにされ、
その苛立ちをダイチにぶつけてしまい、温厚なダイチが声を荒げて楽屋を飛び出してしまうシーンや、
前述のステージ上でがっちり抱き合うシーンは、涙出て仕方なかった。
本来の芸風であるネタを封じて、エアギターをエンターテイメントにまで昇華させたダイノジ
ラスト、インタビューシーンの大谷は言う。
「エアギターとは?…ダイノジですよ。」


単独ライブをやらなくなり、DJをやり始め、エアギターをやり始め、
あの頃のような笑いの衝撃は、もうダイノジから受けることはなくなってしまうのだろうか、と思っていた
大谷さんの口からの「ダイノジですよ、俺も含めて世界一だから!」という言葉に、ひとつの答えをもらった
きっと今、ダイノジ二人はは蜜月のような関係なんじゃないかと思う。
大谷さんにいじられてるアホな大地くんと、そんな大地くんを見てゲラゲラ笑っている大谷さんが大好きだ。


あと最初のシーンでの彼女との会話、「もし俺が今ここから飛び降りたらどうする?」
「うーん、寂しいから私も一緒に飛び降りる」「…そういうところ好き。」というシーンが、らしくて笑った。


テーマソングとして流れるのが長澤知之の「零」。
雷のような歌声とギターが40分間のストーリーを切り裂き、エンディングはものすごい爽快感だった。
エンドロールのバックには出演者入り乱れてのエアギター大会。
爽快。
もう一回見たい。


高橋源一郎の言う、日本の自衛隊は軍隊としての機能を持ちながら、軍隊としては存在していない、
つまり「エア軍隊」であると。
だからエア軍隊を擁する日本から世界一が誕生することは必然だった。
このことを大地くんに説明して、どう思いますか?と問うた時の反応がすばらしい。
「よくわからない」
「そもそもエア軍隊の意味がわからない」
カメラの後ろで爆笑する大谷さん。
大地くんはこうでなくちゃ。愛しい愛しい大地くん!